児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

光と風と雲と樹と

 

光と風と雲と樹と (小学校中学年以上)

光と風と雲と樹と (小学校中学年以上)

 

沖縄に近いK列島に戦争について知りたくていった画家(聞き手)が聞かされたのは、戦争に巻き込まれて多くの島民が死んでいった第二次世界大戦の歴史。マルレ(船の特攻隊のようなもの)建設を行うために来た日本軍に、島民は協力する。だが、戦況は激しさを増し、爆撃を受ける沖縄本島の様子が見える。アメリカ軍が上陸し、捕虜収容所も作られるが、抵抗する日本軍の一団が、島民から食べ物を奪い、投降をすすめる島民をスパイ容疑で殺していく。その無残さを描いた作品だが、同時にどこか静謐さもある。島民を殺していく日本人の異常さ、その日本人が戦後慰霊に来ようとしたとき、追い返す島民の思いは、今に続くものを感じる。