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アウシュビッツの図書係

 

アウシュヴィッツの図書係

アウシュヴィッツの図書係

 

 絶滅収容所で外国の査察対応用に設けられた家族収容所。そこだけは子どもも生きることができた。禁じられていたにも関わらず、学校が開かれ、たった8冊だが本があった。本が見つかれば処刑される。だが14歳のディダは、進んで図書係となりボロボロの8冊を心から愛した。ひるむことなくドイツ人に渡り合い子どもたちを守ったリーダーのヒルシュ。ユダヤ人への憎しみという感情もなく、ただ淡々と医学的な興味のままに人体実験で人間を切り刻むメンゲレ。ほとんど無謀な脱獄を試みる者や、失敗しての処刑。誰を信じていいかさえわからなくなる中で、ディダは本の力を知る。かつて読んだ本、今読む本、物語を語る人さえあれば存在する生きた本。戦争末期、アウシュビッツから移送されて食事さえまともに出ない施設で死にかけたところにやっと解放軍が来て救われる。実在の少女をモデルとしたフィクション。一人一人の登場人物が生きた人間として語られ、その中で本を愛する意志の強いディダの姿が魅力。