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アントン 命の重さ

 

アントン―命の重さ

アントン―命の重さ

 

 著者の実在の叔父をモデルとした物語。ナチスが障害者の抹殺を進める中、病気の後遺症で言語と体が不自由なアントンを両親が懸命に守る物語。学校での差別、地域での白眼視。その中でも、アントンに密かに手を差し伸べてくれるやさしい人もいた。なんとか学校に行くものの、戦場で障害者となった教師が最も苛烈ないじめを行う、大人の行為を子どもたちがまねる。ついに登校が危険となり、家の中で隠れるが、そこも危険になり、田舎に逃がす。最終的に彼を救ったのは、死亡証明書。死亡したことになっていたため殺されずに済んだのだ。しかし、「よい施設に入れる」といいい実際にダミーの施設まで用意して安心して入れさせて殺すというすさまじさは、あきれるほど。実際の叔父は、その後兄と同居し、晩年に絵画教室が併設されている精神病院で過ごしたとのこと。重い障害ではなかったらしいのに、自立ができなかったのは時代のせいか?