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少年は戦場へ旅立った

 

少年は戦場へ旅立った

少年は戦場へ旅立った

 

 1861年。チャーリーは南北戦争が始まることを聞きつける。父は亡くなってしまったが、家は食べるのには困らない農場だ。15歳では入隊できないが、冒険気分で年をごまかして北軍に入隊する。来る日も来る日も訓練が続くことにうんざりするが、やっと初めて参加した戦闘は、想像していたものとはあまりにも違っていた。隣で頭を吹き飛ばされた戦友。次々と銃弾の前に倒れる仲間。腹を撃たれた仲間は助からない。死に向かう長い苦しみを終わらせるために自殺することが分かっていて銃を装填してやる体験。病人の風よけをつくるために、何もない平原で死者を積み上げる。射撃の後は銃剣の戦いが行われる過酷な戦場で、チャーリーは徐々にうつむき、周りとも話さないようになる。知っている人間が死ぬのはつらいから。北軍勝利し、チャーリーは生きて故郷に帰ったが、もう以前の自分には戻れない。わずか二十歳そこそこで自分の命を絶ってしまう。戦争が、より過酷な時代。人間が人間を殺すことが、どんなにその人間を蝕んでいくかが描かれている。現代の戦争は、もっと「キレイ」になっているだろうが、その分さらに恐ろしいと思う。