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タイガー・ボーイ

 

タイガー・ボーイ (鈴木出版の児童文学―この地球を生きる子どもたち)

タイガー・ボーイ (鈴木出版の児童文学―この地球を生きる子どもたち)

  • 作者: ミタリパーキンス,ジェイミーホーガン,Mitali Perkins,Jamie Hogan,永瀬比奈
  • 出版社/メーカー: 鈴木出版
  • 発売日: 2017/06/23
  • メディア: 単行本
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 ニールには言葉の才能が有り、英語や国語の成績が抜群だ。校長先生はニールを見込んで、奨学金の試験を受け、合格して大都市の進学してエリートになることを期待しているが、あいにく数学の成績が苦手で難航している。また、大好きな故郷や家族と離れて生きるなんて気が進まない。校長先生は家まで来て父さんに家庭教師をつけて勉強させろと言うが、家にそんなお金はなく、ニールはますますいたたまれない。姉さんのルパも優秀だけど、家族のために早々に学校をやめている。そんな折、保護区からトラの子が逃げた。金で地区を支配している新参者のグプタは、トラの子をつかまえてブラックマーケットで売ろうとしている。借金で縛られている大人が抵抗できない中で、島中を遊びまわって知っている知識を総動員してトラの子を救おうと決意する。インド生まれのルーツを持つ著者が、進学できない子ども、資本が入って混乱する村、トラの密売など社会問題を自然な形で物語に活かしている。たぶん、現実はこれほどハッピーエンドにはならないだろうが、ニールが学ぶ意味に気づくところはいい。また、こうるさい校長先生が、やはり奨学金をとって学んだのちに、生まれ故郷に帰ってきた先輩だと知るところもステキでした。