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きみはしらないほうがいい

 

きみは知らないほうがいい (文研じゅべにーる)

きみは知らないほうがいい (文研じゅべにーる)

 

小学校6年の米利(めり)は、おばあちゃんの家に行く途中で転校してきた同級生昼間くんと出会う。何となく「どこへ行くの?」と聞いた米利に昼間くんは「きみは知らないほうがいい」と答えた。これは、ふつう知りたくなるよね! というわけで昼間君をつけて、彼がクニさんというホームレスとおしゃべりしていることを知る。だが、昼間くんはクニさんをホームレスと言いたくないようだ。両親が早く死に、兄にばかにされなぐられながら成長したというクニさん。米利のおばあちゃんは、一人暮らしをしているが、気力を無くし、一日中テレビを見ている。まじめな昼間君を、クラスメイトはからかう。米利は5年生の時、みんなから無視されて学校に行けなくなったことがある。特別に何かをされたとも言えないけど、誰も話しかけてくれない空間に耐えられなくなったのだ。昼間くんと一緒にガード下のクニさんのところにいることを目撃してうわさをたてられ、無視されてまた学校に行けなくなった米利。一方、昼間君は突然行方不明になるが戻ってくる。学校での息苦しさが丁重に描かれているが、こんなとき、ふと思うのは加害者側の内側を書いてみてくれないかな、だ。繊細な一人の女の子の成長物語、として、今どき本を読む子なら米里の気持ちを寄せるのだろうが、ここを耐えて少しづつ前に進んでみようって、これでいいんだろうか? タイトルや長谷川集平の挿絵が魅力だが、現在、米利の祖母の年齢の作者は、自分の小学時代を思いつつ描いているのだろうか? どことなく切実さがありつつも観念的にもおもってしまう。