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エイブ・リンカーン

 

エイブ・リンカーン (この人を見よ)

エイブ・リンカーン (この人を見よ)

 

著者がこの本の原型を初出版したのは1937年。太平洋戦争に向かう日本の子どもたちに、アメリカの丸太小屋で生まれた貧しい男の子が、大統領になるまでを語った。これは、単なる努力による偉人伝ではない。リンカーンは、一貫して働くことこそ尊く、そうした人々が大切にされなければいけないという強い信念と人種差別への憤りを持っていた。だが、苦労人として、社会を言論の力で変えるためには、粘り強くあらねばならないことも理解していた。そして、アメリカの庶民は、そうした彼だからこそ自分たちの代表に選んだのだ。王のいない国で、普通の人たちがまともな政治ができるのか? 民主主義という新政治体制への冷ややかなまなざしの中、内なる敵との戦いとしての南北戦争に立ち向かうことになったリンカーン。そこでは、戦闘だけでなく、戦後の和解と統一の維持、全ての人の平等を守る政治が必要でした。ふつうの人間の感覚から離れまいとした、彼の生涯の姿勢が魅力。