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クオレ 上

 

クオレ―愛の学校 (上) (岩波少年文庫 (2008))

クオレ―愛の学校 (上) (岩波少年文庫 (2008))

 

 小学校4年のエンリーコは、彼を立派に育てたいと慈しむ両親と寛大な先生に守られて、個性豊かなクラスメートとともに楽しい学校生活を送っている。作中作品の先生のおはなしは、今見るとかなり愛国的で勇ましさが前面に出ているものも多いが、やはりおもしろい。まるで道徳の教材のように正義が語られるが、その底にあるまっすぐな感じが、お説教のいやみさから救っているように思う。また、クラスにいるどうしようもない嫌なクラスメートの存在も、妙なリアルさがある、個人的には、上巻では「ちゃんのかんびょう」の物語が好きだ。父親が病気だというので田舎から駆けつけてきた男の子が、すっかり変わり果てて横たわっている父親を必死に看病する。いよいよ危なくなってきたというとき、男の子は院内で父親に出会い、間違った患者のところに行かされたことしるが、最後まで看病を続ける。理屈ではなく、それまで看病してきた病人を大切に思い、見捨てられない男の子の気持ちがとてもいい。また、同級生の父が、実は過ちから刑務所に行っていたのだが、子どもには隠してアメリカに行っていたとごまかしていたことを、偶然知る物語も、胸に残る。