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いとの森の家

 

いとの森の家(一般書)

いとの森の家(一般書)

 

 1963年生まれの著者の子ども時代の実体験をもとにした作品。ハルさんという、若いころアメリカに移民し、現在は主人公の近所に住んでいる、手芸やお菓子作りが上手で、刑務所の死刑囚の慰問に行っているという穏やかなおばあさんが登場する。死刑囚の俳句も引用され、これは意図的に入れた? と思ったら、実在の人物だったようだ。のどかな田舎の暮らしの楽しさをていねいに描いていて印象的だが、現在の生活とはギャップがあることもあり(チャボを飼って卵をとって食べたり)、今の子にとっては一種のファンタジーのようにも感じられるのではないだろうか?主人公は4年生だが、読者は本を読む5年生以上の子ではないかと思う。ラストが突然の主人公の転校で終わり、これも実際にそうであったらしいが、物語なのだから、もう少し落ち着いた最後でもよかったかもしれない。