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サンサン

 

サンサン

サンサン

 

 舞台は1960年前後の中国の農村。校長の息子だが元気でいたずら好きなサンサンを狂言回しにして、サンサンの級友や先生など周りの人々を各章の主人公としたちょっと私小説風(生活童話風)の作品。なぜか生まれつき髪の毛がないためにハゲツルと呼ばれている男の子が、小さい頃は気にしていなかったのに、徐々にハゲを気にするようになる悲哀。村一番の金持のお店とその一人息子で優秀なシャオカンとのライバル心と、思いがけない彼の家の没落。特に印象的だったのは、チンばあの物語。夫婦で必死に稼いでやっと土地を手に入れるが夫に先立たれ、体制がかわり私有地がなくなる。だが、命がけで手に入れた土地が、学校用地にされたことが理解できず、学校に住み続け、私有地として主張をするが、サンサンとの交流の中で、学校の子どもたちを自分の子どものように思うようになる。最初はチンばあを追い出すために苦心した学校側が、チンばあ自らがでていこうとしたときには引き留めようとする関係の変化などおもしろかった。サンサンがいわゆる「いいこ」ではないところが面白かったが、同時に死や病気の陰が多い。時代的に、簡単に病気で死んだりもしていたかもしれないが、やや都合よく使っているようにも感じてしまった。これを読む根気がある子は、今少なそう。