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テラプト先生がいるから

 

テラプト先生がいるから

テラプト先生がいるから

 

 新任の先生は、若い男のテラプト先生。最初はナメてたけど、生徒をよく見てていたずらも全部見抜いている。でも、どなったりはしない。いじめられていた過去があって、今はほかの子をいじめることで優位に立っていたアレクシアも、今まではごまかせたのに、テラプト先生は見逃してくれなかった。先生の授業はユニークで面白いし、特別支援学級との交流もとても楽しい。だけど、いつもふざけがちなピーターが投げた雪玉のせいで思いがけない事故が起きてしまった! ユニークな先生と、その先生のおかげで変わっていく子どもたちというパターンはよくあるが、程よくまとめてある。意外だったのは、テラプト先生礼賛だけでなく、事件の後に、テラプト先生を冷静な視点で批判した親の存在。自由には責任が伴う。テラプト先生は自分たちで判断させようとしたが、子どもたちにはまだその準備が不十分だったので事故が起きた、というのだ。だから、今回の事故は子どもたちのせいではないという整理は、いかにもアメリカ的。最終的には無事に解決してハッピーエンドとなるが、テラプト先生は今までどんな人生を送ってきたのかの謎が残ったままなので、ちょっと心残り。