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水はみどろの宮

 

水はみどろの宮 (福音館文庫 物語)

水はみどろの宮 (福音館文庫 物語)

 

 山の中の小さな集落で祖父千松爺と共に住んでいる七つのお葉。お葉を取り巻く自然の中には、山犬のらんや、山の守り神ともいえる白狐のごんの守、黒猫のおノンなどがいる。この作品の魅力は、方言で語られる会話と、美しい描写だろう。きっちりしたドラマがあるわけではないのだが、見えない力を敬いつつましく生きる人々、洪水や火山の噴火という自然の激しさのなかでも、それをあることとして受け止める柔軟で強い千松爺やお葉が、神話の世界のように描かれる。清い物語、というのは、こういうのをいうのだろう。