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神様のみなしご

 

神様のみなしご (ハルキ文庫)

神様のみなしご (ハルキ文庫)

 

 戦後、孤児院として始まったが、現在は孤児というよりも家庭に問題がある子が多い愛生園。そこでの孤児たちの日常が語られる。元金持ちの別荘だったという建物を運営する修道女たち。父親が死に、母親が蒸発して入園した攻撃的な陽一、暖かい食事を食べられる園の生活に感動している郷治、父親から性的に虐待されてきた過去を持つ美優など、過去については背景として軽く触れられる程度。その中での園の子への周りからの差別、様々な行事のようすなどが描かれる。恨んでいた母親が自分を守ってくれたと気付いた勝ち気な少女、おそろしく知能が高く、許しがたい親を冷静に殺害しようとした少年、など魅力的な群像劇であるが、同時に、施設を出た子どもたちの就職状況が悪いという事実に暗い気持ちになる。