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太陽の草原を駆けぬけて

 

太陽の草原を駆けぬけて

太陽の草原を駆けぬけて

 

 現在はウクライナにある小さな町で幸せに暮らしていたユダヤ一家の5歳のエリューシャは、侵攻してくるドイツ軍から家族で逃げる。双子の姉と赤ちゃんの弟。父は途中で軍隊に入り、母子だけでカザフスタンの小さな村にたどり着く。村人と同じ地面を掘った粗末な家、だがエリーシャは地元の子と仲良くなり、牛糞の壁づくりや、そこに巣をかけるカッコーの捕まえ方、魚釣りを習い、家に食べ物を持ち帰れるようになり、それを誇りと思う。幸い、母さんのバラライカの演奏やタロット占いが、臨時収入や村人の尊敬につながった。だが、スターリンを敬愛していた父さんが処刑されたことを知り、母さんは結婚前のポーランドのパスポートを使い、ユダヤ人の難民としてイスラエルに向かうことを決意する。のびやかな草原の暮らしと、サスペンスあふれる脱出行。父親以外は全員が助かり、比較的恵まれたといえる主人公の境遇だが、やはり大きな難題に直面した困難極まるものであることが間違いない。だが、どんな中にも楽しみを見つけるエリューシャの成長はとても心躍る。