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人食い

 

人食い―クラウス・コルドン短編集 (外国の読みものシリーズ)

人食い―クラウス・コルドン短編集 (外国の読みものシリーズ)

  • 作者: クラウスコルドン,いよりあきこ,Klaus Kordon,松沢あさか
  • 出版社/メーカー: さえら書房
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 単行本
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 エッジの効いた短編集。もう少し装丁を大人っぽくしたら、中学生に勧めやすい。特に印象的なのはタイトル「人食い」。町はずれの菜園で、菜園ごっこをしようとしたことをきっかけに、主人公のぼくはそこに住み着く「人食い」とあだ名される男と知り合いになる。戦争で妻子と片腕をなくし、時々飲まずにはいられなくなるが、根は親切な男だ。だが友人ミヒは、いつもアル中の父親からひどい目にあっているので、彼がいい男だと信じてくれない。そしてたまたまぼくが友達と遊んでいて遅くなった日、ミヒはぼくが人食いにつかまっているのではないかといい、たまたま酔いつぶれていた彼はつかまってしまう。何もなかったというのに、子どもに手を出すという嫌疑をかけられ、彼はどこかに連れ去られる。菜園は、今は新興団地になっているが、移民が多いと町の人に不評、何もないのに差別が残る構図が変わらないという恐ろしさを語る。また、クラスでも目立たない男の子ルーディが、ふとナイフをくれ「父親が金持ちだから大丈夫」というのをきいて、後ろめたいながらももらってしまうが、徐々に彼がお金を出してくれるのにクラス中が慣れ、誰も相手にしなかったルーディが注目されるようになっていく「ルーディの父」など、ほんのささいな出来事、ちょっとした違和感が思いがけない事件を引き起こしていく作品が多い。誰もがどこかで思い当たるようなヒリヒリした感じは、さすがコルドン!