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安寿姫草紙

 

安寿姫草紙 (ノベルズ・エクスプレス)

安寿姫草紙 (ノベルズ・エクスプレス)

 

 山椒太夫の物語をモチーフとした作品だが、ファンタジーとも歴史小説ともいえない。表紙がかわいらしいが、内容展開が微妙。物語の発端は安寿の父、正氏が子狐を殺した祟りが発端となっている。正氏の性格は、剛毅で不合理が嫌いということになっているが、直に狐の霊と対峙してるのに霊を認めないのか? また、領民のカウンセラー的な善良な霊能力者を霊能力者というだけで嫌って殺したりするなど、見識が狭い問題のある男、と思う。奥方の伊与も、明るく賢気なのに、讒言でコロっとだまされる。安寿の鬱屈と、岩木山で山姥のような女性に会ったことによる生き方の変化は、全編の中では説得力があるが、ここで会う狼のエピソードはここで終了し、あとの展開とは関係がない。正氏の悪行のため、安寿が犠牲になる物語という因果応報譚という展開に感じられてスッキリしなかった。