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シャイローがきた夏

 

シャイローがきた夏

シャイローがきた夏

 

 たまたま助けた一匹の犬を守ろうとする男の子の、地味だけれど印象的な物語。マーティは11歳。住民はお互いに知り合い同士だが干渉はしない穏やかな小さいまちに住んでいる。ある日、やせて怯えきった犬を見つけ保護しようとするが、それは近所のジャドの猟犬だった。犬に名前さえ付けず残忍な扱いをするジャド。父は、どんな理由があろうとも所有者のある犬を自分のものにするのは泥棒と同じ,ひどい扱いを受けている犬は他にもいると言い、しかたなく返しに行くが、直後マーティに助けを求めて逃げてきた犬をもう一度返すに忍びなくて、シャイローと名付て隠れて飼いはじめる。

エサを買うお金をためるためビンをためたり、自分の食事をこっそり隠して与える。これまで親に隠し事などしたことのないマーティはつらくてたまらない。一つのウソのために、他のウソをついてしまい、袋小路に入り込む。シャイローが他の犬に襲われたことから秘密がばれ、やっと本当のことを打ち明けられる安堵。それでもどうしても返せないとジャドに交渉に行く。

ジャドは、間違いなく嫌な男だが、親から虐待されて育ったことを知る。ジャドとの間の取引を、誠実に履行することでマーティは、ついにシャイローを正式に手に入れることができる。

ジャドがただの嫌な大人と描かれていないことが大きな救いにつながる気がした。これは、「正義」とは何かの本でもあるという思いもふとした。どうしてもそれをしないわけにいかないときに、道は開かれるのではないだろうか?