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Mr.トルネード 藤田哲也 航空事故を激減させた気象学者

 

 日本では無名だが、竜巻の大きさを決める単位(Fスケール)に名前を残した藤田の伝記。主にアメリカに渡ってからの竜巻研究や、飛行機事故を引き起こす気流変化ダウンバーストの研究に焦点をあて、しかも、その原点を長崎の原爆投下後の被害調査の際の観察と連動させて書いている。

冒険好きで、竜巻やダウンバーストを実際に飛行機で観察しようとする好奇心。ひらめきの発想をぶつけて、反発を受けながらも実証的に証明していくプロセスなど、日本人というより、いかにもアメリカで成功しそうなキャラクター。最後の日々、病気で体調が崩れた自分の体を、客観的に観察した記録は、いかにもこのユニークな研究者の性格を表す。

書き方としては、冒頭に飛行機事故を持ってきて、途中も繰り返し、ワイドショー的(?)。もう少しシンプルに描いてもよい気がしたが、このほうがひっぱられて読みやすい子もいるのだろう。