児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ドリトル先生と月からの使い

 

 

ドリトル先生と月からの使い (ドリトル先生物語全集 (7))

ドリトル先生と月からの使い (ドリトル先生物語全集 (7))

 

 虫語の研究に夢中過ぎて、しばらく旅行に出ようともしないドリトル先生に、動物たちは不満たらたら。ようやく応じたドリトル先生は、「運任せの旅行」をすることに。それは、目を閉じて地図帳のページを開き鉛筆で突いた先へ必ず行くというもの。鉛筆の先が突いたのは、なんと月だった。月へ行くなんて無理だと一同がっかりしたそのとき、窓をたたく物音が。月明かりの庭を見ると、家ほどもある巨大なガがいた。ドリトル先生は、そのガを調べ会話を試みるうち、月から何らかの使命をおびて来たのではないかと確信するようになる。月へ向かわねばと、ドリトル先生は密かに準備を始める・・・。
ドリトル先生は、この巻でなんと虫語を習得する。子どもの頃、シリーズの中でこの巻が1番好きだった。ガや虫が好きなわけでもなかったのになぜ?と考えると、まさにこの人間と虫がしゃべるということが現実に想像もできなかったからではないか。そしてなんと言っても、月への未知なる旅という期待感。地図帳を突いた瞬間真っ暗になりすぐには場所がわからないこと、その晩現れた巨大ガ、月から上がる煙の合図、こっそり出発しようとするドリトル先生、うわさを聞きつけた住民の騒ぎ、トミーの密航・・・と、たたみかけるような仕掛けが本当におもしろい。
ちなみに第1部の犬の自伝物語は、月からの使いとは関係ないようでいて、生き物として同等の犬の尊厳が伝わってこちらも印象深い。