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ケンタウロスのポロス

 

ケンタウロスのポロス

ケンタウロスのポロス

 

 人間や神々が自然の精(ニンフ)と交わることで生まれるケンタウロスは、全員が男で荒々しい性質を持っていた。だが、ポロスはケンタウロスではあるが、落ち着いて思慮深く暴力を嫌う若いケンタウロスだった。彼が旅のヘラクレスをもてなしていると、他のケンタウロスがからんでくる。反撃したヘラクレスにより数頭が殺されたことで、ポロスは仲間の恨みをかったため、ケンタウロスの賢者ケイロンのアドバイスを受けて知恵を求めて旅に出る。だがよこしまなケンタウロスのネボスは、自分の名をあげるためにポロスをつけ、不正に彼を陥れて金をせしめる。さらに、その金でケンタウロス一族を牧人から強盗団まがいの集団へ変えてしまった。一方ポロスは絆を結んだヘラクレスの祈りのおかげで救われ、さまざまな経験をし、アマゾン族でイリーネという少女を救う。聖地ドドナで神託を受け、イリーネと別れて故郷に帰ったポロスは、またしてもネポスの罠の中に飛び込んでしまう! ギリシア神話をモチーフにした物語は、予備知識の少ない日本の子にはややなじみにいくいかとは思うが、いきなりケンタウロスを殺戮するヘラクレス、青銅の巨人タロスとの対決などダイナミックで実直的な物語。佐竹美保氏の装画と挿絵もいいが、これもスタンプ・ブックスで軽い装丁にしても良かったのではと思う。ピウミーニはギリシア神話をモチーフにした作品が他にもあるが、神話自体の魅力に寄りかかるだけではない再創造がされている。