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ムーミン谷の十一月

 

ムーミン谷の十一月 (ムーミン童話全集 8)

ムーミン谷の十一月 (ムーミン童話全集 8)

 

ムーミン童話全集の最終巻。ムーミン一家は旅に出ており、登場しない。
ムーミン谷でひらめいた5つの音色が見つからないスナフキンムーミンの家に行くことを想像してお話を作っているうちに本当に行きたくなったホムサ、大好きだった掃除ができなくなってしまったフィリフヨンカ、ヨットを持っているのに海が怖くて乗れないのを隠しているヘムレンさん、100歳になって新しい自分になりたいスクルッタおじさん、そして、ミムラねえさんだけは自分は自分、他人は他人でいられる人。ムーミン一家に会いたくてムーミン谷へやってきた面々が、しばし一緒に日々を送るうち、それぞれの悩みを解決して去ってゆく。
人は人と関わる中で、自分の力で答えを見つけられるということ。ちょうど読み返していた頃に大学で、学校教育とカウンセリングの授業で学んだことと同じだった。
秋から冬に移りゆく自然の描写が細やか。雨音が聞こえるような、霧の湿度にしっとりと包まれるような前半から、やがて雪におおわれるムーミン谷。大人が癒される。