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日本少国民文庫 世界名作選(二)

 

世界名作選〈2〉 (日本少国民文庫)

世界名作選〈2〉 (日本少国民文庫)

 

 第一巻より易しく読める。
須賀敦子さんが中学1年で読み感銘を受け、こういう文章を書きたいと思ったという(『遠い朝の本たち』の「葦の中の声」にて)、アン・モロー・リンドバーグの「日本紀行」。心から納得の美しい文章で、日本人の情感を素晴らしいものに思わせてくれる。アルフォンス・ドーデーの「スガンさんの山羊」は、狼と闘って食われたおばあさん山羊のように誇り高く闘って命を落とす子山羊の話。狼と山羊の友情なんかウソだと思わせる本気感が気持ちいい。ワルデマル・ボンゼルスの「蜜蜂マーヤの冒険」がおもしろい。小さな動物や植物の生態がきちんと描かれて、昆虫好きな子どもはきっと楽しめる。蜘蛛の巣や熊蜂の巣からの脱出は、ハラハラどきどきだ。実際の自然界で、手助けや情けをくれる他の虫はいないだろうが、物語の展開として無理はないし、読者の心情として納得がいく。熊蜂が蜜蜂の巣を襲撃する場面は、戦国時代の合戦シーンを思わせ、ひと時代前の仰々しい訳語が雰囲気もあっていい。カレル・チャペックの「郵便配達の話」も、やはりいい話。