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うみべのまちで

 

うみべのまちで

うみべのまちで

 

 海の下の炭鉱で石炭を掘る過酷な仕事をしている父。その姿を見つめる男の子の日常が淡々と綴られているのだが、素晴らしく美しい海とその地下の炭鉱の暗い世界が対照的に描かれていて強い印象を残す。祖父も炭鉱夫であり、自分も炭鉱夫になるだろうと感じている男の子に悲劇性は感じない。過酷ではあるが、必要とされ代々受け継がれてきた仕事へ誇りを感じる。現在ではここは閉山になっており、男の子は仕事を失いひょっとすると失業し家庭も持てないで暮らしているかもしれない、などと考えてしまった。だが、社会派というよりは子ども時代の美しい思い出の世界を描いていた絵本といえるだろう。やや長いが、高学年向きの読み聞かせに良さそう。