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野生の呼び声

荒野の呼び声 (偕成社文庫 (4021))

荒野の呼び声 (偕成社文庫 (4021))

  • 作者: ジャック=ロンドン,阿部知二
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 1977/02
  • メディア: 単行
 

 神話の英雄譚のような趣のある物語。パックは南部にある判事の裕福な家で大切に育てられ王者の気品をもった堂々とした大型犬として成長する。だが、北極で金鉱が発見され橇をひく犬の需要が急増する中、盗みだされて売られてしまう。激しく抵抗するが、こん棒で叩き伏せられたパックは、新たにこん棒と牙、力が支配する掟を学び、優秀な橇用の犬として成長していく。わき役の犬たちの個性も見事で、これが犬の物語か?とおもうほど。次々に変わる持ち主のキャラクターもおもしろく、特に犬や北極を理解していないばかな持ち主の描写は、こういうヤツいるなぁ、としみじみ。最悪の飼い主から救い出したソーントンとの間の絆の強さと、ソーントンを失った後の野生に帰る姿が残像のようにいつまでも残る。ソーントンを殺したインディアンの書き方などには、当時の白人的な視線(獰猛な野蛮人)を感じるて反発も感じるが、パックが伝説化していくラストの余韻は魅力。