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雪原の勇者 ノルウェーの兵士ビルケバイネルの物語

 

雪原の勇者―ノルウェーの兵士ビルケバイネルの物語

雪原の勇者―ノルウェーの兵士ビルケバイネルの物語

 

「ホーコーン・ホーコンソンズ・サーガ」からの再話。伝説のシンプルな力強さが子どもたちに訴えると思うが、異国の物語であるため小学校中級位の方がイメージをしっかり受け止められる気がした。物語は王と対抗して農民からお金を搾りとる金持ち貴族やいんちき聖職者の集団バーグラーに立ち向かって、まずしい農民だが勇敢な戦士でもあるビルケバイネルが王の遺児を守った物語だ。ビルケバネイルとは「白樺のあし」という意味で、高価なよろいかぶとを持たずすねに白樺の皮を巻き付けるだけで戦ったことに由来する。1206年のクリスマス・イブにバーグラーに追われて助けを求めてきた王妃と幼いホーコン王子を守り、安全な地に導くためスキーの名手トールスティンとシャーボルは王子を抱えて真冬の雪山を越える。だが、王子は王の子どもではないという中傷を受け、王妃インガは焼けた鉄棒の裁きで、鉄棒を握ってもやけど一つしないことで跳ね返す。その後、ホーコンは中世ノルウェーで最も偉大な王となる。今でも「ビルケバイネレン」というクロスカントリー・レースがあるが、これは王子たちの逃避行の一部がコースで、王子のかわりに約3.5キロの重しを持って行うという。最後のこの記述は、サーガをリアルな物語と感じさせてくれるワクワクした終わり方となっていて満足がいく。