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アイヌの昔話 森でひろったふしぎな赤ちゃん (イソイタク5)

アイヌの昔話 森でひろったふしぎな赤ちゃん (イソイタク5)
      文:寮美千子 絵:クロガネジンザ

      発行所:公益財団法人 アイヌ文化振興・研究推進機構

      発行日:2018年3月1日

シリーズ5巻目は、4つのふしぎな話に、歌と小さな話が6つ。
表題作は、三姉妹が森に1人でいた赤ちゃんを連れて帰り面倒を見ていると、実は大男が化けていて娘たちを食べようとしていることに気づき逃げ出す。追いかけてくる大男に向かって三姉妹が櫛や首飾りの玉を投げると、林や森、山になって大男の行く手をはばむところが「三枚のお札」のよう。やがて川に出て釣りをしていたおばあさんに頼むと、「かしこいモリー」(イギリスの昔話)の”髪の毛1本橋”ならぬ、おばあさんの足1本がにゅうっと伸びた橋が娘たちを向こう岸に渡してくれる。ところが、大男も渡っていく途中でおばあさんがくしゃみをして足を引っこめてしまい、川に落ちる。流木が大男の腹を突くと中から虫やらトカゲやらカエルやらが飛び出してきて、大男は死んでしまう。無事に家へ戻ってしばらくたったある日、家がもやに包まれて晴れてみると美しい三兄弟が立っており、三姉妹は結婚して幸せになって村も栄えたという話。
ほかに、ある若者が女の木カツラと男の木ハリギリで舟をつくったところ、その2つの舟が争うので1つを燃やして処分したらその怨念で顔体が真っ赤なかぼちゃのようにデコボコの異形の姿になってしまったという「カツラの舟とハリギリの舟」。「ハシボソガラスに助けられた男」は、女である海のカムイに見初められ冬の荒れた海に引き寄せられてしまった人間の男が、ハシボソガラスのカムイに守られ無事に妻のところへ戻る。「パナンペとペナンペ」は、やせた母犬を助けて金持ちになった正直者パナンペを真似した欲張り男ペナンペが犬のうんちの山に埋もれて死んでしまう話。
歌は、短い物語風(「クモの女神のうたう歌」「お婿さんにはだれがいい?」)と、掛け合いで歌うようなイメージのもの(「カラスのじいさん どこいった?」)。小さな話は3つとも由来話で、カラスの体が黒いのはアイヌの女性の入れ墨の水をかけられたから、むかしシカとウサギがかんじきと角を取り替えたからウサギには角がなく雪の上を軽やかに跳ねられること、魚のタラの大きい口、カレイの寄り目、ウグイのとんがった口の由来。
4巻までとイラスト担当者が代わりデフォルメした挿絵になってしまったのが、個人的には残念。