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風と行く者 守り人外伝

 

タルシュ帝国との戦いが終わり、人々は荒廃の中から立ち直ろうとしていた。タンダと共に市に行ったバルサは、盗人の嫌疑をかけられ窮地に陥っていた旅芸人サダン・タラム(風の楽人)を助け、バルサは彼らの護衛士になる。一行を率いる長エオナは19歳の若い娘だが、バルサはかつてエオナの母サリにジグロと共に雇われて執拗な暗殺者の手を逃れた経験があった。当時のバルサは16歳、未熟な自分にイライラしながらあがいていた。過去の旅と、今回の旅が重なり、森の王の谷間に隠された秘密がその背後にあることが徐々に明らかになっていく。上橋氏らしく、背景にはロタとターサという二つの士族の対立。不遇のためにますます誇りに執着して自分の身を亡ぼすような選択をする愚かしさと、民の平和のために双方の誇りを保った和解を進めようとする賢明さが共に描かれる。今回はいつもストイックなジグロにもロマンスがあったこともわかってちょっとうれしい!