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若冲ーぞうと出会った少年

 

若冲―ぞうと出会った少年

若冲―ぞうと出会った少年

 

 京都錦小路の青物問屋の長男として生まれた忠兵衛(のちの若冲)は、幼い頃から絵を描くことに夢中で、商いに必要な学問や芸妓(書道、三味線、俳句など)の素質は全くない。14歳の春、初めて象をみた忠兵衛は、その優しく澄んだ瞳、白く大きく美しい姿にすっかり魅せられてしまう。23歳のときに父がなくなり家督を継ぐと、使用人やほかの商人、京都の人々の暮らしをまもる責任もあり忙しく働くようになるが、絵を描きたいという思いはくすぶり続けていた。そんな忠兵衛の思いと才能を知るのは、書の師匠である3歳下の僧侶大典と、天秤棒に茶道具をのせて煎茶を売り歩く老人売茶翁(ばいさおう)。ある春のこと。評判の漬物屋を訪ねた忠兵衛は看板に描かれた象に驚く。それは、かつて忠兵衛が思いを寄せて象の絵を託した女性の店だった。忠兵衛40歳。象への思いに背中を押され弟に家督を譲ることを決意すると、絵画一筋の道へすすむのだった。