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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

生まれてくるってどんなこと? あなたと考えたい生と性のこと

 

 著者は小学校教諭で、長年「いのちの授業」の取り組みを行っている。子どもへの授業を続けているだけあって、生と性について聞くときの子どもの気持ちをくみとりながら、理解の進みやすい展開で構成されている。
第1部「生まれてくるってどんなこと?」で連綿とつながる生命誕生の奇跡、第2部「どうして「性」があるの?」で有性生殖による生き残り作戦とそれにより「死」があることを考えさせる。第3部「社会的な性ってどんなもの?」では、いわゆる男らしさ女らしさのイメージや同性愛など性の多様性、お金が関わる性について述べ、第4部「セックスするなら知っておきたいことってどんなこと?」では性体験の時期やセックスのリスクについて、そしてすてきなセックスとは…を子どもに伝える。
鏡の国のアリス』に由来する「赤の女王仮説」のことや「ゲド戦記」シリーズを翻訳した清水真砂子さんが”widow”となったテルーにどんな日本語をあてはめるか困ったこと、『アンネの日記』で女性としての体の変化がつづられた部分を紹介するなど、さまざまな文学作品を通して生と性を学べることも示唆し、中学生向けのブックトークのようでもある。第1部の冒頭と終わりでアイヌユーカラや沖縄のニライカナイ信仰、そしてネイティブ・アメリカンの「サークル」という考え方に触れ、現代科学で解明される前から人々は、いのちは巡っていくということを感じていたのだとも指摘している。