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かみさまにあいたい(2019課題図書小学校中学年)

 

かみさまにあいたい (ポプラ物語館)

かみさまにあいたい (ポプラ物語館)

 

 小学校3年生の雄一は、祖母のお墓で偶然竜也に出会った。授業態度が悪く乱暴な竜也はみんなから嫌われて敬遠されている。だが、竜也が一度だけ会ったおいしいカステラをくれたやさしい神さまに会いたいと思っていることを知り、死んだおばあちゃんのことを思う雄一は素直に共感したことで、二人は急接近する。高い場所でメッセージをかかげれば、神さまに見えるかもと考えた二人は、竜也の案内で街はずれの高台の廃屋に行くが、作業の途中で謎の女性が入って来て逃げだした。その後、竜也はクラスメートにからかわれてキレ、椅子で殴りかかった。間に入った雄一は足を折る大けがをするが、入院した病院の主治医佐藤先生は、あの廃屋の女性で、その病院には竜也の母も務めていること、看護師として忙しい母親にかまってもらえないことが、竜也を荒れさせていることを知る。毎日病院に来る竜也と雄一は接近する。そして、退院のお祝いに、佐藤先生はリフォームした家に遊びに誘ってくれる。おばあちゃんが認知症になってから、そんなおばあちゃんの存在を知られたくなくて隠したわだかまりのある雄一は、そこで、もう一度その後悔を乗り越えて強くなろうと決意し、おかあさんの手作りカステラを先生にだしてもらった竜也も、何かに気付いたようだった。ふたりが、元気にバーベキューに向かうところで希望を感じさせるラスト!  寂しくて荒れる竜也、認知症のおばあちゃん、そして友情というベタなネタがそろっているので、感想文は書きやすいかもしれないが、正直竜也が作り物めいて感じられた。実際に、孤独感から追い詰められて問題行動を起こす子がリアルに描かれているというより、実はいい子だけどさびしがりで乱暴な表現になっちゃう子って、こんな感じでどう? というイメージが描かれている気がした。だいたい、他の子を骨折させるケガを負わせる、というのは、どう考えても異常事態。いかにもまじめそうな竜也の母親は、必死にあやまりにくるのが当然だけど、病院で偶然に会ってやっとわかるとかある? また、そんな怪我をさせといて(いくらそのつもりがないはずみとはいえ)平然と竜也は病室に遊びに来れるのか? なんとなく不自然さを感じる作品。