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ぼくとニケ(2019課題図書小学校高学年)

 

ぼくとニケ

ぼくとニケ

 

 5年生の玄太の家に、同級生の仁菜が突然捨てられた子ネコを持ち込んできた。仁菜のお母さんは、極端な猫ギライで、以前ノラ猫にエサをやっただけで激怒されたことがあるからだ。弱っていた子ネコだったが、玄太のおかあさんがすぐ病院に連れていってくれたので元気になり、玄太の家で無事に飼うことになった。実は仁菜は登校拒否で学校に行っていないのだが、毎日ニケと名づけた子ネコに会いにやってくる。ところが、ネコを見に来ていることがバレ、仁菜はおかあさんに玄太の家に出入り禁止を申し渡された。かわいく成長するニナ。心配した玄太が来られるようにしててほしいとお願いに行くと、仁菜の母親は、子どものころに安易にノラ猫を拾って飼ったが、子ネコが生まれたりネコを家の前に捨てられたりして増えた末に、最後にはみんな死なせてしまった経験を話し、安易なことをしてはいけないことを説明する。そして妹(仁菜の叔母)が保護猫を預かる活動をしていることを明かし、実態を見学に行かせてくれる。仁菜はまた玄太の家に出入りできるようになるが、その様子を同級生に目撃され、照れた玄太は、つい来るなといってしまう。だが、ニケが病気になってしまい仲直りするが、その時にはもうニナの病気は悪化し、安楽死まで考えなければならない状態になっていた! という物語。作者が獣医師だけあって、病院での対応のようすなどよく描かれているし、命の大切さやいじめをテーマに感想文を書けそうだが、物語として不自然さや読みにくさを正直感じた。例えば、語り手の「ぼく」の名前が「玄太」であることがわかるのはp44。それまで「げんちゃん」と呼ばれているので、まぁ、すぐに結びつくけど、ここは初出のところで「もう五年になったんだからげんちゃんじゃなくて、玄太君とか呼べよ(心の声)」とか入れといた方がよいのでは? また、今どきだとこうした説明もせずにどなりつける母親も多いのか? と思うけど、理由があるなら始めから説明すべき。また、玄太の母親にこれだけお世話に(夕食を食べさせてもらったり、しょっちゅう出入りさせてもらっている)のに、ありがとうや感謝を示すようすもなく、その前で娘を怒鳴りつけてるって、ヤバくない? それに、妹であるおばさんも車でひょいと会いに行けるくらいに近くに住んでるようで、性格も優しくて穏やか。特に姉とケンカしてるふうでもなさそう。母子家庭で看護師という設定なら、仁菜の母親は、同級生だったという玄太の母だけでなく無理のない範囲で妹にも助けを求めてときどきお世話になっているのがふつうじゃないのか? そして、登校拒否の娘を放置して(それどころか玄太の家という居場所を奪って)いる仁菜の母親、娘に対して何をしてるの? 看護師として勤めるには、それなりに忍耐力や社会性が必要だと思うんだけど・・・育児放棄?。結局、人間性豊かな玄太と玄太の家庭が仁菜を救ったようなものだが、実際に登校拒否の子どもが出たら、学校側からのコンタクトもありそうだけど、とふにおちませんでした。