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マンザナの風にのせて(2019課題図書小学校高学年)

 

マンザナの風にのせて (文研じゅべにーる)

マンザナの風にのせて (文研じゅべにーる)

  • 作者: ロイスセパバーン,ひだかのり子,Lois Sepahban,若林千鶴
  • 出版社/メーカー: 文研出版
  • 発売日: 2018/07/01
  • メディア: 単行本
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日系アメリカ人のマナミは、両親とおじいちゃん、そして犬のトモと穏やかに島で暮らしていた。兄と姉は遠くの大学に行っている。だが日米開戦により全てが変わる。一家や近くの日系人たちは、スーツケース1個だけで砂漠のような不毛の地マンザナの収容所に入れられる。犬は置いていかなければならないが、マナミはトモを置いていくにしのびず、こっそりコートの下に隠して連れていった。だが、途中で見つかり、強制的に引き離された。置いて来れば、親切な牧師さんに引き取られるはずだったのに、どうなってしまったかわからない。自分のせいだ! マナミはショックで言葉が出なくなる。島からの親友キミも、新しい学校のロザリー先生も、家族もみんな優しいが、どうしても言葉がでない。そして、せっかく大学にいっていた兄のロンが、収容所へと戻ってくる。学校の先生になり、態度の悪い男の子たちを根気よく面倒をみていたが、収容所内では不満が爆発して騒ぎが起き、ロンが面倒をみていた不良たちが関係していたことで、困った立場に追い詰められる。大変な日常の中でも、畑を作ったり働いたりと努力を続ける家族と、後悔にさいなまれながら出口を探し続けるマナミ。タイトルは、絵の得意なマナミが、トモの絵を描いて、トモが来られるようにと願いを込めて風にとばしたところからきている。それにしても、アメリカでは戦時中に日系人を収容所に入れた歴史をきちんと日系人に謝罪し、負の歴史として児童文学でも伝えている。振り返って日本を見れば、小学校高学年向きに、戦時中に強制連行で日本に連れてこられ、その後朝鮮動乱で祖国に帰る機会を逸して在日となった韓国・朝鮮の子どもが主人公になった児童文学はあるだろうか? と考えてしまった。でも、そんな感想文を書いたら自虐史観とかいわれるのだろうか?