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もうひとつのワンダー

 

もうひとつのワンダー

もうひとつのワンダー

 

 顔に障がいがあるためにひどい扱いを受けたオギーが、自分の居場所をちゃんと手に入れるまでを描いた『ワンダー』のサイドストーリー。オギーをいじめていたジュリアン、幼なじみで親同士も仲が良いクリストファー、初日からオギーの案内役となったシャーロットの3人の物語。とりわけジュリアンがおもしろい。オギーをいじめまくるジュリアンだが、読んでいくと実は怖がりで小さい頃からゾンビ映像を見ただけで眠れなくなってしまう過敏な子だったことがわかってくる。祖母がジュリアンが実は単に生理的に怖かったこと、それを認めたくなくていじめに走ったことを見抜き、ジュリアン自身もそれに気づくところはとてもいい。こうした嫌味な敵役の内面を考えていくことは、とても重要だと思う。また、ある意味なりゆきで仲良くなったクリストファーが、成長するにつれてオギーといることで不愉快な視線を向けられるようになることでオギーへの友情を重く感じる辛さ、シャーロットがいい子ぶっていると批判されて、先生に言われたから優しくしているだけなのかと悩むようすなどいずれも共感できる。誰の心にもあるこの3人のような思い。『ワンダー』と一緒に読むと、物語が一層立体的になるが、必ず『ワンダー』を先に読むこと!