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ルワンダの祈り 内戦をいきのびた家族の物語

 

ルワンダの祈り―内戦を生きのびた家族の物語

ルワンダの祈り―内戦を生きのびた家族の物語

 

 1994年わずか3か月で80万人が殺されたジェノサイド(大量虐殺)が起こったルワンダ。少数のツチ族が多数のフツ族を治める構図が、独立によって多数はフツ族の勢力が増して対立が激化、その中でツチ族が殺されたのだ。1996年に取材に行った著者は、到着直後子ども兵士(写真があるが、どう見ても10歳前後の子ども!)に殺されかけるが、なんとか解放されすぐに帰国する。その後10年以上を経て再度いったルワンダは、空港こそ整備されていたが、大量の寡婦や孤児をかかえ、大きな傷が残っていた。生き残った女性の支援施設で、家族を殺され、自分もレイプされさらに意図的にエイズに感染させられた女性たちの痛ましさをしる。著者は、夫と子どもの一人を殺されたが生き延びて今は国会議員となっているアルフォンシンさんの体験を取材する。助けてくれたフツ族の友人もいたが、今も近所にいるフツ族の隣人が夫や子どもの殺害に手を貸し、自分の家の家財道具を持ちだして今でも平然と暮らしていることへの激しい怒り。指摘するとあやまっても、自主的にはあやまらなかったことへの絶望は、想像してあまりある。こんなことがあったのはアフリカだから? そうだろうか? ナチスドイツ下のドイツでも連行されたユダヤ人の家に、たちまち近所の人が群がって略奪する様子を描いた『そこに僕らは居合わせた』のように、さしたる罪悪感もなしに(政府がしていると言い訳し、みんながやっているんだからと正当化する)ことは多いのではないだろうか? 私自身も例外ではないのではないか? という恐怖を感じる。ジェノサイドを他人事ではなく、いつ、どこに起こってもおかしくない事件としてとらえ、どうしたらそういうことが起こらないかを考えたいと思う。