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縞模様のパジャマの少年

 

 
縞模様のパジャマの少年

縞模様のパジャマの少年

 

 ベルリンで素敵な大きな家に暮らし、親友だっていたのに、軍人の父さんがソートーカッカから特別な仕事を命じられたために引っ越しをしなければならなくなった9歳のブルーノ。着いたところは小さな家で出入りするのは軍人ばかり。12歳の姉さんグレーテルは、自分は自分は大人なのにブルーノは子どもだと言ってバカにして相手にしてくれない。ブルーノは寂しくて仕方がなかった。ブルーノの部屋からは鉄条網に囲まれた広い場所が見えて、そこには大勢の縞模様パジャマを着た人が住んでいるが、父さんは決して近づいちゃいけないという。シューヨウジョというらしいけど、姉さんもブルーノも、そこがどういうとこだかよくわからない。ある日、遊び相手がいない寂しさに鉄条網をたどって探検していたブルーノは、鉄条網の向こう側にちょうど同じ年くらいの男の子を見つける。その子シュムエルはとても悲しそうだったけど誕生日が同じだったので、ブルーノはうれしくなった。それから、誰にも知られないようにブルーノはこっそりシュムエルに会いに行った。食べ物を持っていくと夢中で食べたけど、ブルーノは持っていく途中でおなかがすいて自分で食べてしまうこともあった。かつてのベルリンでの生活と、ここの生活の奇妙さがブルーノの視点で描かれる。豊かな生活の中で大切にされるのが当然、他の人だってそういう生活をしていると素朴に感じているブルーノの視点が、一層シューヨウジョの異常さを浮き立たせる。ラストは、読者全てに「自分の」物語として読んで欲しいと強く訴えている。