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ナム・フォンの風

 

ナム・フォンの風 (あかね・ブックライブラリー)

ナム・フォンの風 (あかね・ブックライブラリー)

 

ナム・フォンはベトナム人の女の子だが、学校で誰とも話さないし遊ばない。家に帰ると時にはおばさんのお店チュー・ミンのお手伝いをする。でも、おばさんって呼んでるけど本当のおばさんじゃない。学校のリリー先生は大好きだけど、病気になってしまった。不安や寂しさを抱えた毎日の描写の中で、徐々にナム・フォンの過去がわかっていく。祖国で危険を感じ祖父と共にボートピープルになったけれどもその過酷な経験の中で祖父まで失ってしまったことがわかる。リリー先生が無事に回復し、祖父の死の事実を受入れて激しく泣くことで言葉を取り戻し、クラスになじんでいく主人公の姿はとてもうれしい。自分と同年齢で過酷な経験をする子がいる事実を、物語を追いながら素直に知ることができる。