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しずかな魔女

 

しずかな魔女 (物語の王国 2-13)

しずかな魔女 (物語の王国 2-13)

 

 中学生の草子は不登校になってから、図書館のお気に入りの席で過ごすのを日課にしている。小さな事件をきっかけに司書の深津さんと顔見知りになった。深津さんはお守りにと、草子のノートに「しずかな子は、魔女に向いてる」と書いてくれた。数日後、その言葉の意味を知りたいと思った草子は「この文章が載っている本」をリクエスト。受け付けた深津さんは友人から聞いた言葉だからと一旦断るが、草子の熱意に負けてその2週間後、封筒に入った紙の束を渡す。1枚目には『しずかな魔女』というタイトル、目次に続いて第1章が始まっている。草子は夢中でその物語を読み始めた。
『しずかな魔女』は、小学4年生の野枝とひかりのひと夏の物語だ。野枝は物静か、ひかりは活発でおしゃべりと性格は真反対なのに、出会ってすぐに気が合った2人。ひかりは、おばあちゃんから聞いた言葉として「しずかな子は、魔女に向いてる」と野枝に言う。おそろいのワンピース、夏祭り、2人だけのツリーハウス、夜の空き部屋探検と楽しく過ごした夏休みの終わり。ひかりは一旦、両親の離婚で団地を離れるが、野枝の出した手紙が両親の心を動かし再び戻ってくる。ひかりにとって野枝の手紙は「魔法の書」。やっぱり「しずかな子は、魔女に向いてる」と、ひかりは言って笑うのだった。
物語を読み終えた草子は深津さんに感想を渡し、両親にも今の思いを手紙で伝えた。相変わらず図書館に通う日々だが、草子にはいつかこの物語を本にするという夢が芽生えるというラスト。

数年前、ある図書館の公式ツイッターでつぶやかれた「学校がつらい子は図書館へいらっしゃい」のことと思われる言葉が序盤に登場し、居場所としての図書館、本の世界の広さへの信頼が根底にある。それでも、行事や夏休みに集まる来館者や休館日もあって、静かな居場所を求める子の試練はいろいろです。やはりそこにいる人(職員や大人たち)の理解や受容が大事だなあと思います。    (ふ)