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カマキリと月ー南アフリカの八つのお話

 

カマキリと月―南アフリカの八つのお話 (世界傑作童話シリーズ)

カマキリと月―南アフリカの八つのお話 (世界傑作童話シリーズ)

 

 南部アフリカに昔から住んでいたサンやコーサの人々の世界観をもとに創作した民話風の物語が八つ。
表題作は、月に乗って神様のように尊敬をあつめたいと考えたカマキリが、月を捕まえようと手を尽くすがうまくいかず、むしろ月の偉大さに気づいてカマを頭の前にあわせて月に祈るようになったという話。
「絵かきになったノウサギ」は、年老いた絵かきのノウサギが若いノウサギにその技を伝え、安心して”天の牧場”へ旅立って行く。月の満ち欠けで時の流れを表しつつ輪廻思想を重ねているようで印象的。
ほかに、日照りの夏、年寄りクマネズミの祈りが雨を呼ぶ「ブアブンの花が散る」や、人間の銃に追われて生き別れたジャッカルの若い夫婦が感動の再会を果たす「ジャッカルの春」など。挿絵が素晴らしい。日本の薮内正幸さんのような感じです。 (ふ)