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アンチ

 

アンチ (STAMP BOOKS)

アンチ (STAMP BOOKS)

 

 おじさんのマティが自殺したおかげで、ぼくは学校の有名人になったらしい。みんなぼくをみると陰でコソコソささやく。カッカとしたぼくがますます反抗的になっても無理はないって思わないか? 

子どものころから重度のうつ病だったおじを面倒見ていた父は、おじが死んでから自分まで生気を無くしてる。反抗的に爆発した14歳のアンチルビッツは、カウンセラーのキレネットの元に送りこまれた。キレネットは意外といいヤツだったが、アンチことアンチルビッツの中の「ハラネズミ」は素直になれない。そんな彼の前に現れたのは、学校でも札付きの問題児で退学になったとのうわさのアラドと、超かわいい女の子のリサの二人組。二人はラップのグループ「ラプトル」を作っていて、折からラップに惹かれていたアンチを仲間に誘ってくれた。だが、強烈な入会儀礼は、なんとラップのCDの万引き。生まれてから泥棒なんて一度もしたことなかったのに! 体の中の怒りが、言葉になってとびだし、アンチはラプトルの仲間にも認められる。だが繰り返される万引きに耐えられなくなり、リサに相談すると、リサも賛同してくれてアラドに対抗。結果的に二人はラプトルからはじきだされてしまう。ラップの全国大会もあるというのに。二人だけで大会に出ることを決めるが、ブレないリサと比べて、アンチは迷ってばかり。そして父さんは相変わらずゾンビみたいだ。大会の参加費のために、ついにラップのことを打ち明けると、母さんが出して来た条件は、ガタガタになっていた成績を立て直して、全教科70点以上を採ること! 気が狂いそうになるけれど、ともかく決めた。何が何でもやるだけはやる。だが、大会はスポンサーによりすでに結果が決まっているという公然の秘密があり、さらにアラドは大会のステージ上で、リサとアンチを個人的にディスるラップを仕掛けてきた。どうするアンチ! というわけで反抗的だけど実はまじめな男の子のラップによる自分探し、と言っていい物語。正直言って、毅然としているリサと強がっているけれど実は弱いアサドのキャラの背景をもう少し知りたかった。舞台はイスラエル。日本人にとってはなじみがない国だが、14歳は万国共通、違和感なしに楽しめる。