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ふしぎな笛ふき猫ー民話「かげゆどんのねこ」より

 

ふしぎな笛ふき猫―民話・「かげゆどんのねこ」より

ふしぎな笛ふき猫―民話・「かげゆどんのねこ」より

 

 昔、安房の国北朝夷村(千葉県の旧千倉町今の南房総市)に、かげゆどんという笛好きの名主がいました。かげゆどんは、いつも飼い猫のシロをひざにのせて笛を吹いていました。ある年のこと、年貢米を収める時期が来ましたが、その年は天気が悪く不作でした。かげゆどんは重い気持ちで、年貢米について話し合うため上総天神山に向けて旅に出ました。その晩、宿で休んでいると、隣の部屋が賑やかです。耳をすますと「かげゆどんがいらした」という声がして、自分の得意な笛の音が聞こえてきました。翌朝、不思議に思いながらも会議に出席して村へ帰ると、シロの姿がなくおまけに大事な笛まで見当たりません。すっかり気を落としていると、どんな病気も治すという薬売りが訪ねてきて、おもしろおかしい話で元気づけてくれました。そして最後に薬売りは、江戸の将軍様のところで笛を吹く猫が大切にされているらしいと話しました。薬売りが帰って、ふと眠くなったかげゆどんは夢を見ました。猫の姿になってお殿様の前で笛を吹き、ほうびとして年貢の取り立てを減らす約束をしてもらったのです。翌朝シロがひょっこり戻り、笛も元の袋の中に見つかりました。そしてまもなくお代官から、今年の年貢の取り立てを減らすという知らせが届いたのでした。
山口マオさんの出身地に伝わる民話を元に、北村薫さんがアレンジを加え納得のいく結末を加えたとのこと。かげゆどんとは勘解由使のことで、平安時代国司の引継ぎ文書を検査する職務があったそうです。巻末には、18代目山口勘解由さんのお宅にあるという白猫シロの像の写真があります。  (は)