児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

インド神話

 

インド神話 (岩波少年文庫)

インド神話 (岩波少年文庫)

  • 発売日: 2020/10/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 あまり類書がない分野を、インド神話の研究を専門にしている著者がまとめている。スズキコージの挿絵もムード満点。厳しい修行をして神に認められたり、それによって存在が高まったり、神と悪魔が入り乱れ、悪魔の中にも行い正しいものがいたりなど一筋縄ではいかない混とんとした世界が展開する。この異質さに、取りつきにくさを感じる子と、逆にハマる子がいそう。現代の感覚では把握しきれない感じもあるが、同時に誰にも倒すことのできない強大な力を持つ兄弟に差し向けられたのは美しい乙女で、きょうだいが彼女をめぐって殺しあうことで二人を倒すなど、思わず納得の戦略は普遍のもの。不思議な世界観を楽しみたい。

水のかたち

 

 霧、つゆ、霜、雪などが植物や大地を装飾するように飾る様子を美しい写真で紹介した本。やや長いが、よみきかせに使うのも可能だろう。拡大された窓の霜や霧氷などが特に美しい。

海賊黒パンとプリンセスに魔女トロル、2ひきのエイリアンをめぐるぼうけん

 

 子どものころからいろいろ空想をするのが好きだったという著者の思いがそのまま作品になったようなユーモラスな短編集。「海賊黒パン」は、DVDを返却に行く途中でネズミの海賊に奪われてしまい、取り返しに行く冒険。/「王女と怪獣」は、いつも冒険を夢見ている王女が、本当に怪獣に会ってしまってたたかう。/「発明家ビル」は、発明が大好きな孤児のビルがさまざまな親(なんとエイリアンまで!)に引き取られそうになって発明品で撃退する。/「セリーナと海ヘビ」は天才の女の子セリーナが海ヘビに対決。いずれもロアルド・ダールが好きな子なら喜びそう。気楽に楽しく読める。

重力って・・・

 

重力って……

重力って……

 

 裏表紙に読み聞かせできる科学絵本、というコピーが書いてある。見開きには一行しか言葉がなく絵も遠目がきく感じでリアル。確かに読み聞かせに向きそうだが、内容に微妙に違和感を抱いた。すべてのページで重力という言葉が使われているが、引力と重力はイコールではない。それをすべて重力でいいのだろうか? ニュートンはリンゴが落ちるのを見て重力を発見したと言われるが、同時にリンゴは落ちるのになぜ月は落ちてこないのだと考えたと言われる。そうしたもう一歩の整理をせめて後ろの解説ページだけでも加えてもらえれば、というのが気になった。

ようこそ宇宙の研究室へ すばる望遠鏡が明かす宇宙のなぞ

 

 人間の体の原子が宇宙の誕生であるビックバンや星の成長の中で作られたものであり、だから宇宙は私たちの体の中にある、という導入から始まって、星の観測だけでなくそこからわかることについても言及している。望遠鏡の発達の歴史、すばる望遠鏡の制作の苦労にも触れつつ、次世代の望遠鏡についても言及している。出版年が少し前なので、この本での未来はすでに過去。アルマ計画は完成したけどJELT(日本超大型望遠鏡)計画は実行されなかったのだな、などと思いをはせると、日本の天文学はどんなふうにこれから進められていくのかなとも思いました。

ヴァン・ゴッホ・カフェ

 

ヴァン・ゴッホ・カフェ

ヴァン・ゴッホ・カフェ

 

 小さなカフェで起こる、ささやかな魔法の事件。突然オポッサムがあらわれたり、いなびかりとともに予言の詩が沸きでてきたりなど幻想的。個人的には好みのタイプの作品ではないけれど、こういうタイプの作品と共鳴する読者がいると思う。相手によってはオススメ。

フレンドシップウォー こわれたボタンと友情のゆくえ

 

 グレースは休暇で行ったおじいちゃんのところで、おじいちゃんが買ったという工場の中で大量のボタンを見つける。おじいちゃんに頼んで、全て送ってもらった。グレースにはエリーという親友がいた。華やかでセンスがいいけれど、ちょっとマイペース。クラスで工場の勉強をしたときに、おじいちゃんの工場のことを話してボタンをもっていったことがきっかけでボタンのちょっとしたブームが始まる。エリーはすてきなボタンをもってくるが、今度ばかりはグレースの方が種類も数も多く、それがきっかけでエリーから無視されるようになった。一方、調べ物が得意のハンクと仲良くなってボタンについていろいろ考えるようになった。学校のボタンブームが加速する様子を観察しながら、グレースは流行はどんなふうに起こるのかやエリーとの関係を見つめなおしていく。勝気だけれど、良い面もちゃんとあるエリーとの関係を作り直し、グレースの危機にハンクとエリーがかけつけてくれるところがぐっとくる。こういう友だちとのモヤモヤ、世界共通のなやみですね。