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ある日とつぜん、霊媒師

ある日とつぜん、霊媒師

ある日とつぜん、霊媒師

概要

中学1年生の女の子、キャットの悩みは霊媒師である母親。物わかりもよく、女手一つで自分を育ててくれていることに感謝をしているが、家には霊がうようよしているというような状態を異常だと思っている。その上、最近は自分にもどうやらその才能が受け継がれているようで、霊が見えてしまう。

学校でなんとか普通の女の子としての生活を送ろうと思うが、母親が霊媒師であることが知られると、異常者扱いされ、溶け込めない。

クラスにはもうひとり、チェロの特別なレッスンを受けるために転校してくることになった変わり者の女の子ジャックがいて、結局キャットはこの子を唯一の友だちとして学校生活を送ることになる。

そんな中、図書館で出会った幽霊の謎を二人で追跡するうちに、キャットは自分の才能を認め、ジャックも、行き詰まっていたチェロと再び向き合うことができるようになる。

 

感想と評価

タイトルから想像されるキワモノ感はあまりなくて意外であった。会話のテンポもよく、読みやすい。

描かれているのは、要するに、自分の趣味と母親の趣味のギャップに悩む中学生であり、彼女が特殊な才能に目覚め、自己実現していく過程であり、ごくごくありふれた学園ドラマである。

霊媒師の母親がうざったいのは、霊を呼び寄せるから、というよりも、むしろ理解のある母親であることと、お香を焚いたり、インド風の巻スカートをはいて、ベジタリアンであったりする、そのスタイルにある。そのあたりむしろとてもリアルで笑ってしまう。

著者は、「エンデュアランス号大漂流」の著者。あれはおもしろかった。

ただしかし、特に後半の展開は、あまりにも早く、ご都合主義的だ。一つ一つ謎が解決していく、という道筋は踏まず、推理小説の種明かしのように、実はこうでした、でとんとん話が終わってしまう。

これを併せると、やはりあまり高い点はあげられない。このあとも続編がどんどん出たことを考えると、最初の一冊は開架にして、その後は閉架、というような扱いでもよいだろう。

 

ただ、これはまさにライトノベルなのではないか。とすると、このようなライトノベルをどう評価するか、という事なのだと思う。

ライトノベルとは何か?

1)主人公は等身大であること

だいたい同世代の女の子(男の子)であり、第3世界とか、中世とか、あまり好まれない

2)そのくせ、何か特殊な才能を持った、特別な存在であること

魔女とか、若女将とか、霊媒師とか

そうすると、登場人物はだいたい類型的になる。

3)会話がテンポよく進むこと

4)ストーリーは出来事中心で、どんどん進むこと

引き続き、このことは考えてみたい。