ムカシのちょっといい未来―ユウレイ通り商店街1 (福音館創作童話シリーズ)
- 作者: 田部智子,岡田千晶
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2010/06/20
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログを見る
概要
主人公小村武蔵5年生の家は、駅裏のさびれた商店街ユウレイ通りにある、昔ながらのパン屋さん。その昔ながらの所と、武蔵とが混ざって、「ムカシ」とあだ名されている。
母親はすでに亡く、父親と祖母、妹で店を切り回す。父親が気まぐれでつくるゲテモノパンだけが特色と言えば特色で、ぱっとしない商売に、ムカシはさえない気持でおり、学校で宿題になった「自分の未来」の画にもなかなか手が付けられない。
そんなあるとき、ゲテモノパンのナスミソが意外な大ヒット商品となり、店には行列ができる。しかし、父親は、あまりに売れすぎると、きっぱりナスミソパンをやめてしまう。父親のパン屋の姿勢に納得がいかないムカシ。
級友であるライバルのパン屋の息子とトラブルを起こしたムカシは転んで骨折。
まあ、それをきっかけに父親としみじみ話して、決して父親は投げやりにパン屋をやってるのではない、と納得。ライバルのパン屋の息子にもそれなりにつらいこともあるのだと理解する。
というわけで、自分の未来はよくわからないが、みんな元気で仲良くがいいと思う、というような話。
感想と評価
どっかで読んだことがあるような感じがした。課題図書の「オムレツ屋へようこそ」によく似ている。
主人公は小学生で片親。身近な学校生活を軸に、親の職業をめぐる反発と和解、というようなテーマ。
舞台は小さな町の商店街、昔ながらの方やオムレツ屋、かたやパン屋。
比べれば、オムレツ屋よりはよくできている。パン屋であることは、物語の主軸を為しているし、父親のパン屋という仕事を理解する、という筋道は、オムレツ屋に居候してジャーナリストの母の仕事を理解する、というよりも筋が通っている。
とはいえ、すごく優れた作品、とは言えない。枠組みはまずありきたりだし、等身大ではあるものの、そこに飛躍ないし、飛躍の予感がない。それでどうしたの、と突っ込みたくなる。
サブタイトルのユウレイ通りは、他の巻で商店街の様々な店が登場するらしいが、さびれた商店街のユウレイ通りというだけで、ファンタジー的な要素は全くなし。ミスリードではないか。
というようなわけで、内容も、評価も地味な作品というに尽きる。手堅くはあるものの。