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コンチキ号漂流記

コンチキ号漂流記 (偕成社文庫 (3010))

コンチキ号漂流記 (偕成社文庫 (3010))

対象 高学年以上

概要

いかだ船に乗ってペルーからポリネシアまで、古代人の旅を実証・再現するべく実験航海を行った探検記録。いわずと知れた名著。

いくつか版はあるが、偕成社版はややダイジェストにしてあるとの事。ただ、あまりその事は気にならない。

クジラザメといった訳語は、おそらくジンベエザメなのだが、今もそのままなのだろうか。

感想

映画を見に行ったので、そのついでに改めて読み直したのだが、やはり文句なくおもしろい。

往復の電車で一気に読み終わってしまった。

古代人の謎を解明する、という学術的わくわく感、いかだで太平洋を渡れるはずがない、という、もっともな反対意見と、見事にそれらが覆される爽快感、大海原のまっただ中で遭遇するまさに大自然の神秘といった、数々の出来事。

最後に珊瑚礁にたどり着くまでのどきどき。

ドキュメンタリーならではの説得力と、ドキュメンタリーとは思えないほどの物語性を兼ね備えている。

そしてなんといっても、ユーモア。随所で吹き出し、命がけの大変な冒険なのだという事を時に忘れそうになる。おそらく、著者は自分のことをちゃんと客観的に見られる人なのだろう。本人たちが大まじめで、命がけでやるということと、そのことを逆に笑い飛ばせるだけの余裕なりがあるということ、この両方が成功の秘訣なのだろうと思わせる。

ゴムボートに乗って、いかだを離れて眺めると、誰もが、ゲラゲラ笑い出さずにはいられなかったという。海上にぷかぷか漂う草のいかだと、その上でうろうろするひげ面の男どもが、それほど滑稽であったという話と、そのゴムボートをうっかりロープでつなぎ損ねると、危うく太平洋の真ん中で生き別れになってしまいそうになったという話など、様子が目に浮かぶ。

 

ついでに、映画は原作をそれなりに忠実になぞっており、興味深かった。映像で見て、こんな感じだったんだろうなあと納得できるものあり。

バルサ材というのが、あんなに軽いものなのか、という事なども。