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ロジーナのあした

ロジーナのあした―孤児列車に乗って

ロジーナのあした―孤児列車に乗って

対象 中学生以上

概要

19世紀のアメリカでは、孤児救済のため、孤児列車を仕立て、身寄りのない孤児を西部に連れて行き、里親を探すという事業が行われていた。

主人公はポーランド系移民の娘12才のロジーナ。

年齢が高かったため、孤児たちの監督をいやいや引き受けることになる。

引率の女先生は、冷たく、とりつく島もない感じ。

ロジーナは、孤児列車なんて、孤児を奴隷扱いするだけの人買い列車のようなものととらえていて警戒を怠らない。他の孤児仲間も、幼児から、同年代まで一筋縄ではいかない連中が集まっている。

町々で、孤児救済の集会というか品定めが行われ、それぞれ里親を見つけてもらわれていくが、ロジーナは、言葉巧みに言い逃れたり、戻ってきたりで結局里親は見つからない。

団体の事業としては、終点で一旦打ち切りになり、売れ残りは東部の救貧院送りになるところだが、女先生は個人の資格で売れ残りを引き受け、さらに西部に旅を続ける。

冷たい印象だった女先生も、自分なりの最善を尽くそうとしていたのだとロジーナも知り、最後は、女先生に引き取られて、二人でカリフォルニアへ行くことにする。

 

感想

銀河鉄道999のよう。列車というものは、次から次へと新しい町が現れては後ろにさがっていくよくできた舞台装置。最下層の開拓民がとにかく労働力として孤児をほしがるような状況、12才といえども「女」として求められる事さえある状況、時々に見聞きするかなり悲惨な状況は、列車が走り去ったからといってなくなるわけではないので、どうなったのかフラストレーションがたまるが、そういうものを踏み越えて西部へ、新天地へと向かう主人公の気持について行けば、さわやかな読後感である。少なくとも、行き着く先が収容所、というような物語ではないので、安心して読める。