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まぼろしの上総国府を探して

概要

現在の市原市のどこかにあった「上総国府」の場所を、新聞記者があれこれ推理する。

現在も結論は出ていないが、だいたいこんなところじゃないか、という合意は形成されつつあるらしい。

感想

主題は、「上総国府がどこにあったか」というよりも、「そういう疑問を抱いたときの調べ方」だといえる。

図書館に行く、市役所に行く、現地調査する、人に聞く、という地道な取材の積み重ねが描かれるので、調べ学習の方法論というような事なのだろう。

肝心の「上総国府」の場所については、市役所が出している報告書以上の成果はないので、特別大スクープを放ったというような事ではない。分かっていることは分かっているが、それ以上の事は分からない。

そもそも上総国府、とは邪馬台国だの、仁徳陵だのといった古代史ミステリーの本流からいえば、まあ、ローカルネタ。地元の人だって知ってるかどうか。謎としてはいささかしょぼい。

謎もそこそこ、方法論的にも常識的。この「身の丈に合った感じ」が、手頃と感じられるか、それともおもしろみに欠けると感じるか、そこは意見の分かれるところだろう。

しかし、時々挟まれるおやじギャグというか、無理している感じの「親しみやすさ」の演出がやや痛い。