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ヘリオット先生と動物たちの8つの物語

概要

英国の田舎町で獣医を開業するヘリオット先生の実体験に基づく動物物語。

ここでは、子ども向けに8話を選んで収録。

感想

ヘリオット先生の動物エッセイは、大人向きでも何冊も出ており、実際、とてもおもしろい。

英国でも高い人気を誇り、舞台となった田舎町はヘリオット先生の町として、今も観光客が押し寄せるほど。

基本は、先生の顧客たる田舎の農場を舞台に、ほのぼの、のんびり、ちょっぴりほろりの人情ものが展開する。

ただし、子ども向けに再編集したらしいこの掌編集は、やや物足りない感じがする。迷子になったのを拾われて、子豚と一緒におっぱいにありつくようになった子猫の話だの、ペットコンテストで見事優勝したポニーの話だの、あっさりしすぎて、なんだか、新聞の地方版のちょっといいはなしコーナーの投稿みたいだ。

ヘリオット先生のよさは、もっと、田舎のじたばたどろどろしたところもありながら、動物を通じて、時折キラリと人間っていいな、という光がきらめく、というあたりにあって、あまり短くすると、毒気が抜けてつまらなくなるのかも。

杉田ヒロミの挿絵も、その毒気抜きに一役買っていて、正直、つまらない。

ヘリオット先生は好きなだけにちょっと残念。