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グース・ガール がりょう番の娘の物語

グース・ガール―がちょう番の娘の物語 (ベイヤーン国の物語シリーズ)

グース・ガール―がちょう番の娘の物語 (ベイヤーン国の物語シリーズ)

  • 作者: シャノンヘイル,Shannon Hale,石黒美央,せのおゆり,武方恵美,渡邊真弓,中原尚美
  • 出版社/メーカー: バベルプレス
  • 発売日: 2011/01
  • メディア: 単行本
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『プリンセスアカデミー』で、少女小説の系譜的な作品を書いている作家。グリムの『がちょう番の娘』をなかなかきれいにドラマにしている。動物と心かよわせ、風をあやつる王女が嫁ぐことになるのは、敵国の王子。平和をもたらすためだ。だが、途中で王女は侍女に襲われ、侍女が王女にすり替わる。逃れた王女は、森の民のもとへ、そこでガチョウ番をする中で、一人の青年と心通わせるが・・・、といったらもうおわかりですよね。身分を隠した王子なわけです。だが、王子は義務として、隣国の王女と結婚しなければならない。そしてまた、森の民と、王国の都市の民との間の反目。と、メロドラマが、展開するのです。残念なのはファンタジーの加減が微妙なところ。グリムをご存知な方なら(私もストリーテリングで語りますが)、忘れがたいのはファラダと、風に舞い上がるキュルトヘンの帽子ですよね。これを理屈ファンタジー(としか説明できないケド)で処理している。

いっそ『魔女とふたりのケイト』のような心理劇にしたら面白かったかも。だが、最後まで元の展開を外さないでいけたのは立派です。