児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

テラプト先生がいるから

テラプト先生がいるから

テラプト先生がいるから


物語は、生徒達からみた新任教師と、自分たちの学校生活の語りから進行する。さながら湊かなえの『告白』形式をとった学園もの。騒がしくいたずらばかり起こすピーター、転校生のジェシカ、クラスのヒエラルキーのトップに君臨し、仲間外れなどのコントロールをしたがるアレクシアなど…6人の生徒達の視点による、テラプト先生が赴任して来てからのクラスの変化を、わりとわかりやすく多面的に描いていて面白かった。

しかし、ラストのテラプト先生の事件などは、盛り上げ過ぎというか、過剰な出来事のような気もするが、ジェシカの母親の、罪の意識に襲われてうなだれるジェシカに対して、きっちりと、テラプト先生も悪い部分があったときちんと発言してくれたことは、大人の存在をきちんと実感させてくれる場面だった。ようは、子供達の自己責任に対する考え方どう教育していくかという、1人の教師の実験的な試みのように思えた。


非常に物語の持っていきかたとして、無理がなく面白いのだが、

読んで行くうちに、妙に不気味な気持ちになっていく。それは一体何なのかいろいろ考えてみたが、テラプト先生の視点が最後まで描かれていないからだろう。

子供たちが徐々に成長していく姿は非常に見ていて楽しいのだが、先生の考えが全く私たちに伝わらないので、あまり人間味を感じられない。そして子供たちが一方的に先生に好意を向けている姿は、なんだか、ちょっと怖いと感じてしまう。

先生がもうちょっと人間味がある描かれ方をしていれば、この物語はもっと面白かったと思う。