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バイキング王物語

 

バイキング王物語 (ちくま少年図書館 55)

バイキング王物語 (ちくま少年図書館 55)

 

 「海賊」について色々本を渉猟中。

概要

九世紀ノルウェーの王様、オラーフ・トリグバセンの一代記。

バイキングの全盛期。血みどろの勢力争いを戦い、父親も殺され、自分も奴隷に売られたりするところから這い上がり、見事ノルウェーを統一するも、在位わずか五年で、デンマーク・スウェーデン連合軍に敗れて海に身を投げた、という。ノルウェーのキリスト教化の功労者として、ノルウェーでは現在でも大変人気のある王様であるらしい。

感想

歴史の本、と思って読み始めたのだが、さながら北欧神話のような、一種の叙事詩的な物語だった。悲劇の名君というあたり、きっとノルウェー版の源義経のような感じなのだろうか。死後も死体が見つからず、生きのびてどこそこの王様になった、みたいな伝説が語り伝えられるあたりも似ているかも。

時代はバイキング。「アルフレッド王の戦い」では、海の向こうから来る荒くれ者、という見え方しかしなかった彼らが、どんな社会で、どんな風に生きていたのか、を垣間見ることができる。

それにしても、キリスト教への改宗を迫るというのは、こんなに激しいものだったのか。先祖代々の神様をそう軽々とは捨てられないという、私たちから見てまことにもっともな申し出も、脅しすかし、拷問し、逆らうものを皆殺しにしながら、キリスト教に切り替えていったのだ。

歴史の本、というより、物語として見てよい。対象は、歴史の多少の知識を考えると中学生からか。北欧神話の楽しめる子なら大丈夫。おすすめできる。